今回はコパノリッキーとその産駒について考察していこうと思います。
種牡馬データ
2010年3月24日生
門別・ヤナガワ牧場生産
種付け料:115万円(フリーリターン特約付き)
父:ゴールドアリュール→サンデーサイレンス→Halo→Hail to Reason→Turn-to
母:コパノニキータ
母父:ティンバーカントリー→Woodman→Mr.Prospector
三代母父:リアルシャダイ→Roberto→Hail to Reason→Turn-to
四代母父:Alydar→Raise a Native→Native Dancer
牝系は主にアメリカで発展したもので、1986-87年ごろに、コパノリッキーの4代母に当たるアリーウインが輸入されて日本に渡ってきました。
同じファミリーの出身馬にはサンライズペガサス(父サンデーサイレンス、'05 毎日王冠・東京T1800m)、サイモントルナーレ(父ゴールドアリュール、'13 丹頂S・函館T2600m)がいます。
日本に輸入されなかった分岐からはストームソング(父Summer Squall、'96 BCジュベナイルフィリーズ・米D8.5F)が出ており、輸入されてミッドサマーフェア(父タニノギムレット、'12 フローラS・東京T2000m)、ソフトフルート(父ディープインパクト、'20 秋華賞3着・京都T2000m)姉妹や、アイスストーム(父ストーミングホーム、'20 メイS・東京T1800m)が出ています。
牝系図には門別のヤナガワ牧場の生産馬が並んでおり、牧場のかまど馬から生まれた名馬といえるでしょう。しかし、血統表にはトニービンやリアルシャダイなど、当時のトップサイアー達が居並び、社台グループ輸入の牝馬が放出されて芽吹いたのかと思うような血統です。
ゴールドアリュールは2020年11月現在で10頭のGI級競走勝利馬を送り出していますが、うち8頭が母の父にMr.ProspectorかRobertoを持っており、例外であるスマートファルコン(母父ミシシッピアンーHyperion系Aureole、'11 JBCクラシック・大井D2000m他GI級6勝)も母母父にRaise a Native産駒クラウンドプリンスを、ゴールドドリーム(母父フレンチデピュティ、'17 チャンピオンズC・中京D1800m)は3代母父にMr.Prospectorを持っており、”黄金パターン”のわかりやすい種牡馬で、その双方を母系に持つ本馬は「終わってみれば…」という馬でした。
ゴールドアリュールの解説になってしまいますので、一定度に留めますが、Mr.Prospector系は主に日本で発展しているKingmambo分岐(キングカメハメハ、ロードカナロアなど)、欧州が中心のSeeking the Gold分岐(Dubawi、マクフィ、モンテロッソなど)、北米で勢力を持つFappiano分岐(エンパイアメーカー、ダンカーク、American Pharoahなど)の3つに大別できると考えていますが、そのうちKingmambo分岐とSeeking the Gold分岐との組み合わせで活躍馬を送り出していますし、Roberto系との組み合わせでもGI馬を送り出しています。
母コパノニキータは3歳から6歳まで走り、22戦で3勝を挙げました。勝ち星はすべてダート、1600-1800mの距離でした。6歳の初頭で競馬場を離れ、牧場に帰ったコパノニキータの第3仔がコパノリッキーです。
デビュー時点では 2歳上の半姉ラブミーニキータ(父クロフネ)が新馬戦で勝ちを挙げたのみで、活躍馬の血統というわけではありませんでした。
戦績:
2012年(2歳)1戦0勝
2013年(3歳)7戦4勝 未勝利、条件戦、ヒヤシンスS③、伏竜S、兵庫CS
2014年(4歳)6戦3勝 フェブラリーS、かしわ記念、帝王賞②、JBCクラシック
東京大賞典②
2015年(5歳)6戦3勝 東海S、フェブラリーS、JBCクラシック
2016年(6歳)7戦3勝 かしわ記念、帝王賞、MCS南部杯
2017年(7歳)6戦3勝 かしわ記念、MCS南部杯、東京大賞典
キャリア計 33戦16勝
競走生活で目を引くのは、明け4歳のフェブラリーSでの勝利でしょう。16頭立て最低人気での先行逃げ切りでした。人気薄での積極策・田辺騎手とどことなくロゴタイプとの共通項が見え隠れしますが、騎手心理の盲点を突く騎乗の多い騎手ですので…。
その後は人気薄での勝利を払拭するように実績を重ねていきました。また、晩年までコンスタントに勝利を重ね、GI級競走11勝目を現役最終戦で飾りました。前記録保持馬のホッコータルマエはGI級競走10勝目を挙げてから1年近く勝利に見放されたこともあり、1年目の種付け数の差(コパノリッキー:190、ホッコータルマエ:164)はこのあたりの”風呂敷の畳み方”の影響と見立てることもできます。
ともあれ、3歳で世代重賞を制してそれなりの早熟性を示し、7歳に至るまで大きな不振・故障なく競走生活を全うしたタフネスは人気を集めるのに十分な資質と見ています。
産駒ピックアップ紹介
コパノリッキー産駒138頭のうち、5頭をピックアップして紹介します。
シュウザンアイの2019(クレイグダーロッチ系)
シュウザンアイは2002年生まれのアフリート産駒で、現役時代は55戦3勝の成績を残しました。きょうだいに活躍馬はいません。
牝系は戦前に宮内庁が輸入したクレイグダーロッチに遡る系統で、活躍馬は1990年以前に集中していますが、近年だとダンスディレクター(父アルデバランII、'17 シルクロードS・京都T1200m)、ラインスピリット(父スウェプトオーヴァーボード、'18 スプリンターズS3着・中山T1200m)が出ています。
サンデーサイレンス系種牡馬×非分岐経由Mr.Prospector系牝馬の組み合わせからは、サンライズノヴァ(父ゴールドアリュール、母父サンダーガルチ、'19 MCS南部杯・盛岡D1600m)が出ています。
母父アフリートの活躍馬にはニシケンモノノフ(父メイショウボーラー、'17 JBCスプリント・大井D1200m)、ノボジャック(父フレンチデピュティ、'01 JBCスプリント・大井D1200m)がGI馬になっており、DG競走で長く走ったナムラタイタン(父サウスヴィグラス、'11 武蔵野S・東京D1600m)などが出ています。
父をSS系に絞ると、モルトベーネ(父ディープスカイ、'17 アンタレスS・阪神D2000m)、ショウナンアポロン(父アドマイヤマックス、'16 マーチS・中山D1800m)、ハンソデバンド(父マンハッタンカフェ、'10 共同通信杯・東京T1800m)のほか、プリンセスジャック(父ダイワメジャー、'13 桜花賞3着・阪神T1600m)が出ています。
アフリート=ダート馬のイメージ例に漏れず、ダートでの活躍馬が多めです。芝で不振かといえばそうでもなく、挙げた2頭のほかにもサイドワインダー('05 関屋記念・新潟T1600m)やサチノスイーティー('06 アイビスSD・新潟T1000m)、メイプルロード('02 小倉2歳S・小倉T1200m)が出ています。ニシケンモノノフは2歳で重賞初制覇、DG戦線を彷徨い続けて最後にGIにたどり着きました。殻を破り続けるのが上級産駒の証ではあるのですが…
ウインレーシングクラブで一口3.5万円×400口=総額1400万円で募集されています。
トウホクビジンの2019(ゴールデントレジャリー系)
母トウホクビジンは2006年生まれのスマートボーイ産駒で、現役時代は163戦して地方重賞5勝を含む13勝の成績を残しました。全弟にセクシーボーイ('19 ウインターチャレンジ3着・佐賀D1400m)がいます。
グランド牧場が輸入した牝系の出身で、活躍馬はトウホクビジンとセクシーボーイの姉弟ぐらいと、地味さは否めません。
SS系種牡馬×Topsider系牝馬の組み合わせからは、ブルーメンブラット(父アドマイヤベガ、母父Topsider、'08 マイルCS・京都T1600m)、マイネルメダリスト(父ステイゴールド、母父アサティス、'14 目黒記念・東京T2500m)、プラチナグロース(父ゴールドアリュール、母父アサティス、'16 東京盃3着・大井D1200m)が出ています。
地味目の血統ということもあり、活躍馬はそう多くありませんが、GI馬もおり、天井が極端に低いことはなさそうです。半姉は中央で勝利は挙げられませんでしたが、地方兵庫で4勝を挙げていますし、半兄はJRAで1勝、先日1勝クラスでもメドの立ちそうな3着がありました。
祖母、母とグランド牧場の生産馬ですが、姉兄ともにビッグレッドファームの生産馬です。
ラフィアンターフマンクラブで一口12万円×100口=総額1200万円で募集されています。
写真を見る限りでは父と比べてやや胴詰まりですが、広背筋の発達具合といい、馬体の「前半」は父の姿がよく出ていると見ます。胴短は成長次第の面があり、まだ伸びる可能性を残しています。大きな臀部をしていますし、肩の角度も大きく、なめらかな捌きをしています。いい産駒です。
ハタノアデールの2019(ナイスランディング系)
母ハタノアデールは2014年生まれのハービンジャー産駒で、現役時代は11戦1勝の成績を残しました。半兄にハタノヴァンクール(父キングカメハメハ、'13 川崎記念・川崎D2100m)がいます。
社台系の牝系の出身です。ハタノヴァンクールのほか、ジャガーメイル(父ジャングルポケット、'10 天皇賞・春・京都T3200m)、イクノディクタス(父ディクタス、'92 オールカマー・中山T2200m)が出ています。
SS系種牡馬×デインヒル系牝馬の組み合わせからは、フェノーメノ(父ステイゴールド、母父デインヒル、'13-14 天皇賞・春・京都T3200m)、ミッキーアイル(父ディープインパクト、母父ロックオブジブラルタル、'14 NHKマイルC・東京T1600m)、メイケイエール(父ミッキーアイル、母父ハービンジャー、'20 小倉2歳S・小倉T1200m)が出ています。
母の代から門別の(有)グッドラック・ファームの生産馬です。牧場名義なのになんで「ハタノ」冠? という疑問が浮かんだので、調べてみたところ、祖母の名義は畑末廣郎(ハタ スエヒロウ)さんという方でした。名義継承がなされていると考えると、姓名から冠名は取られているのでしょう。牧場名義になっても使用し続けている理由はよくわかりませんが。本馬は北海道サラブレッドセールで(有)ケイアイファームに561万円で落札されました。
ロードホースクラブで一口2.2万円×500口=総額1100万円で募集される予定のようです。
サマーセールの映像を確認してきましたが、まだ発展途上の馬体という印象を受けました。ただ、広背筋の発達具合は父の遺伝か良好に見え、後肢の成長があれば見栄えのする体に化ける可能性を秘めています。
落札価格が公表されているにもかかわらずほぼ倍額で募集予定というロードホースクラブの豪胆ぶりには脱帽ですが、募集価格なりの収得賞金を得られるでしょうか…?
マリアージュの2019(アーミールージュ系)
母マリアージュは2005年生まれのブライアンズタイム産駒で、現役時代は36戦4勝の成績を残しました。きょうだいには目立った活躍馬はいません。
牝系はフランス系で、三代母All Alongは'83 凱旋門賞をはじめとしてGI5勝を挙げた名牝で、'82 ジャパンカップで来日した経験もあります(2着)。自身も繁殖馬としてアロングオール(父Mill Reef、'89 グレフュール賞・仏T2100m)、Alnaqeuer(父Miswaki、'99 シーモア卿賞・仏T2400m)を送り出しました。アロングオールは日本に輸入され、OP勝ち馬も出しています。
他の牝系出身馬にはジュリエット(父Sadler's Wells、'03 ギヴサンクスS・愛T12F)、Asolo(父Surumu、'98 ロワイヤルオーク賞3着・仏T3100m)がいます。
SS系種牡馬×Roberto系牝馬の組み合わせからは、エスポワールシチー(父ゴールドアリュール、母父ブライアンズタイム 、'10 フェブラリーS・東京D1600m)、オーロマイスター(父ゴールドアリュール、母父Lear Fan、'10 MCS南部杯・盛岡D1600m)が出ています。
母は静内の矢野牧場、本馬は静内の高橋ファームの生産馬です。京都サラブレッドクラブで1万円×500口=総額500万円で募集されています。
現状の馬体を見たところ、胴短で、マイルより短いところの方が向きそうですが、体に対して大きめの臀部が目を引きます。胸の深さに物足りなさはあるものの、価格を考えればそれなりかもしれません。
ムゲンの2019(マーシュメドウ系)
母ムゲンは1996年生まれのアジュディケーティング産駒で、現役時代は12戦0勝の成績を残しました。1歳上の半兄にウイングアロー(父アサティス、'00 フェブラリーS・東京D1600m、ジャパンカップダート・東京D2100m)がいるほか、母としてメイショウスミトモ(父ゴールドアリュール、'17 名古屋GP・名古屋D2500m)、ロングプライド(父サクラローレル、'07 ユニコーンS・東京D1600m)を送り出しています。
牝系は1960年代に輸入されたマーシュメドウを基礎とする比較的古いファミリーで、上で挙げた以外には、ユーセイトップラン(父ミルジョージ、'98 アルゼンチン共和国杯・東京T2500m)が出ています。
SS系種牡馬×Danzig系牝馬の組み合わせからは、メイショウスミトモのほか、プリンシアコメータ(父スパイキュール、母父アジュディケーティング、'19 エンプレス杯・川崎D2100m)、ロジャーバローズ(父ディープインパクト、母父Librettist、'19 東京優駿)が出ています。
母は静内のフジワラファームの生産馬で、本馬は同地区の坂本智広さんの生産馬です。ターファイトクラブで5万円×200口=総額1000万円で募集されています。
誤解を恐れずに言うなら、あまりダート馬らしくない体つきに映りました。脚長で、歩様は機敏さに欠ける印象ですが、大跳びの走法を想起させます。性格的にもおっとりとしたタイプで、追込み型のレースが合う可能性が高いです。